糖尿病内科
糖尿病内科
糖尿病は、血糖値(血液中の糖の濃度)を下げるインスリンというホルモンが十分に作用せず、血糖値が慢性的に高くなる病気です。様々な合併症を引き起こし、他の病気の原因にもなります。
糖尿病の怖いところは、血液・尿検査をしないと早期発見が難しく、多少血糖値が高い段階では下記に示すような自覚症状がほとんど無いことです。症状が出てから受診された場合は、すでに合併症が進んで重症になってしまっている方も珍しくありません。健康診断などで高血糖や尿糖を指摘された方、気になる症状がある方は可能な限り早期の受診をお勧めします。
治療により良好な血糖コントロールを保ち、血圧やコレステロールをしっかり管理された方は合併症の進行を抑えられることが、様々な研究から明らかになっています。
糖尿病の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法の三つの治療の組み合わせが必要です。患者さんはそれぞれ生活スタイル、体格、体質などが異なります。一生お付き合いする病気であるため、患者さん一人一人に合った、継続できる治療を選択することが大切です。当院では、糖尿病専門医として最新の知見を踏まえた治療の提案をさせていただきます。
また糖尿病の方の中には他のホルモンの病気や内臓の病気が隠れていることがあるため、必要に応じて検査をお勧めします。
日本人で多いのは2型糖尿病です。2型糖尿病はインスリンの分泌低下または感受性(効きやすさ)の低下により高血糖状態となりますが、それには遺伝的要因と、様々な環境的要因(過食、特に高脂肪食、運動不足、肥満、ストレスなど)が関係していると考えられています。
高血糖が続くと全身の大小の血管が障害され、様々な臓器に影響を与えます。小さな血管が障害されると糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害という三大合併症を引き起こし、進行すると失明、透析、下肢切断などを引き起こす危険があります。また、大きな血管が障害されると動脈硬化が起こり狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などを発症しやすくなります。
2型糖尿病ではコレステロールや中性脂肪などの脂質異常症、高血圧症、さらには一見無関係に思われる骨粗鬆症、歯周病、認知症、悪性腫瘍などとも関連が指摘されています。また糖尿病では免疫力が低下するため、様々な感染症を起こしやすくなります。
このような事態を防ぐために、糖尿病や高血糖を指摘されたら、放置せずにできるだけ早く受診し治療を開始することが重要です。
網膜の毛細血管が傷つき視力低下や出血を起こします。初期は自覚症状がなく進行しますが、最終的に失明に至ることもあります。糖尿病網膜症は日本人の失明原因の第2位です。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても眼科で定期的に「眼底検査」を受け、良好な血糖コントロールを継続的に行うことが大切です。
腎臓には糸球体という毛細血管のかたまりがあり、血液をろ過しています。高血糖の状態になると、この糸球体が傷つき、放置することで徐々に腎臓の機能が低下し、尿の中にたんぱく質(特に尿中アルブミンが腎臓の状態を把握する上で重要です)が出てきます。最終的には腎不全となり、人工透析が必要な状態に至ってしまいます。日本の人工透析の原因は、糖尿病性腎症が最も多く、現在も増加し続けています。腎不全を防ぐために、継続的な血糖コントロールと定期的な尿検査を行っていくことが大切です。
糖尿病は末梢神経にもダメージを与えます。症状としては、手足がしびれ、悪化すると痛みの感覚が鈍くなり、けがや火傷の痛みに気づかなくなります。とくに足でけがや火傷を放置すると壊疽(足が腐ってしまうこと)に至りやすく、場合によっては足の切断を余儀なくされる場合もあります。日頃から足の裏などをチェックし、何かある場合は早めに相談しましょう。
食事療法は、糖尿病治療において最も重要で、土台となる治療です。適切なエネルギー量で、炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素をバランスよく摂ることや、ビタミン、ミネラルなどを欠かさず摂取することが大切です。
2型糖尿病の方では、しっかりとした食事療法を行えばそれだけで血糖をコントロールできる場合もあります。しかしながら、ただエネルギー量を制限し栄養バランスをおろそかにしてしまうとかえって健康障害が起きてしまうことがあります。一人一人の生活スタイルに合った食事内容や摂取方法をアドバイスさせていただきます。
運動でエネルギーを消費することで血糖値が下がります。また、運動を行うことでインスリン感受性が高まり、良好な血糖を保ちやすくなります。運動療法としてはウォーキングや自転車、スイミング、ジョギングなどの有酸素運動が主となりますが、通勤や家事などの非運動性活動熱発生(NEAT)も有効です。
血糖やHbA1c(ヘモグロビンA1c:1ヶ月間の平均血糖値を示唆する血液検査の数値)が非常に高い場合や、2〜3ヶ月ほど食事療法と運動療法を続けても血糖管理が上手くいかない場合は、薬物療法を検討します。経口血糖降下薬を用いる内服療法と、インスリンやGLP-1受容体作動薬などを注射で補充する自己注射療法の二つがあります。1型糖尿病では、インスリンを自分の体から出すことはできないためインスリンによる治療が中心となります。
糖尿病治療薬は日々大きく進歩しており、DPP‐4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP‐1受容体作動薬、GIP/GLP‐1受容体作動薬などが新たに使用されております。これらの薬は低血糖の副作用を起こしにくく、体重を減らす作用、心不全や慢性腎臓病に対し効果を持つものもあります。またインスリン治療にも新たな製剤やデバイスが登場しています。
どの薬剤をどのように組み合わせて治療するかは、糖尿病のタイプや合併症の進行程度、患者さんの生活スタイルなどによって、総合的に判断する必要があります。患者さんと十分にコミュニケーションをとりながら、最適な治療を見極めていきます。